山形県指定無形民俗文化財 黒森歌舞伎
酒田に受け継がれる冬の風物詩「黒森歌舞伎」今年も開催されました
酒田市黒森地区に伝わる黒森歌舞伎は、江戸時代中期・享保年間から、黒森日枝神社に奉納されてきた農民歌舞伎です。およそ280年以上にわたり、地域の人々の手によって大切に受け継がれてきました。
毎年、旧正月にあたる2月に奉納され、雪深い季節に行われることから「雪中芝居」「寒中芝居」とも呼ばれています。厳寒の社殿で上演される舞台は、出し物の多さやスケールの大きさでも知られ、全国でも屈指の伝統芸能といわれています。
本狂言の前には、黒森小学校の児童による少年太鼓が披露され、地域の未来を担う子どもたちの力強い演奏が、会場を温かい空気で包み込みます。世代を超えて受け継がれる姿に、黒森歌舞伎が"地域の誇り"であることを改めて感じさせられます。
今年の演目「加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)」
今年の黒森歌舞伎で上演された演目は「加賀見山旧錦絵」。
本演目が黒森歌舞伎で演じられるのは、平成十七年以来となりました。
物語は、中老・尾上が執拗ないじめを受け、ついには自害に追い込まれるという悲劇から始まります。その無念を晴らすため、忠義心の厚い腰元・お初が立ち上がり、すべての元凶である悪女・岩藤を討ち果たすまでを描いた復讐劇です。
この作品は、「女版忠臣蔵」とも称されるほど、義理と忠義、そして女性たちの強さが際立つ華やかな物語。雪に包まれた厳寒の社殿という特別な舞台の中で、登場人物たちの感情がより一層際立ち、観る者の心を強く揺さぶる上演となりました。
長い歴史を持つ黒森歌舞伎だからこそ味わえる、重厚さと美しさが共存するひととき。
地域に根差した伝統文化の奥深さを、改めて感じさせてくれる演目でした。
